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 僕達はもう沿岸に戻る確信もなかった。たぶん燃料が足りなかったから。だがひとたび沿岸に戻っても、着陸地を捜し出さねばならなかった。ところが月の入りの時刻だった。方位情報がなく、すでに耳が機能していない僕達は、少しずつ目も機能しなくなっていた。月は雪原に似た霧の中で、弱い燠のようになって消え終えていた。今度は頭上の空が雲で覆われ、僕達はそれ以降、雲と霧の間で、すべての光とすべての実体のない世界の中を飛行していた。 
 僕達に応答していた着陸地は、僕達自身の情報を僕達に与えることを諦めていた。「方位測定できず. . . 方位測定できず. . .」 というのは僕達の声があちこちから伝わり、どこにいるのか分からなかったのだ。
 すると突然、僕達がもう絶望していたとき、輝くひとつの点が前方左手の水平線上に現れた。僕は熱い喜びを感じ、ネリは僕のほうに身を傾け、歌っているのを聴いたのだ! それは着陸地でしかありえなかった。その航空灯台でしかありえなかった。というのはサハラ砂漠は夜、全体が消え、大きな死の地域になるからだ。しかしながらその光は少しきらめいて、消えた。僕達は沈むときに見える星に方向をとってしまっていた。それはただ数分間だけ、水平線上に、霧の層と雲の間にあった。
 そのころ僕達は他の光がいくつか現れるのを見て、それらに代わる代わる、かすかな希望を抱いて方向をとっていた。そしてその灯が長く点いていたなら、僕達は生きるために必要な試みをしていた。

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