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 そういうわけで僕はビュリーが戻ったときのことを思い出す。彼はその後コルビエールで事故死したのだが、その古参のパイロットは僕たちの真ん中に来てすわり、まったく喋らずに重々しく食事をしていた。その両肩にはまだ労苦の重圧が残っていた。悪天候の日の夕方のことだった。その路線の最初から最後まで、空はじめじめしていて、すべての山々が卑劣な仕打ちのようにパイロットに向かって転がってくるように見えるのだ。僕はビュリーを見ていたが、つばを飲み込んでから、彼の飛行が困難だったのかどうかやっと尋ねた。ビュリーは聞いていなかった。額にしわを寄せ、料理に向かって身をかがめていた。悪天候のとき無蓋の飛行機では、よく見るためにフロントガラスの外へ顔を出す。すると風の平手打ちをうけ、長いこと耳の中では風が響いていた。ようやくビュリーは顔を上げた。声が聞こえていたらしく、思い出して急に明るく笑い始めた。その笑いに僕は驚いた。ビュリーはほとんど笑わない人だったし、その短い笑いは彼の疲れた顔を輝かせるものだったからだ。彼は自分の勝利について他に何も説明しないで、身をかがめ、再び黙って食べ始めた。だが灰色のレストランで、その日のしがない疲れを癒す小役人たちの中にいて、両肩に重圧を残したその仲間は、僕にとって不思議な貴族のように見えた。彼の粗野な外見の内側には、ドラゴンに打ち勝った天使が現れていた。


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